ウェットスーツの選び方 — レンタルか購入か、フルかロングジョンか
ウェットスーツ選びは意外と悩む
トライアスロンのスイムパートで着用するウェットスーツ。初めてのレースが近づくと、「買うべきか、レンタルするか」「どのタイプを選べばいいか」と悩む人が多いです。私も最初のレース前に相当迷いました。
結論から言うと、初心者はまず既製品で十分です。各メーカーが細かい寸法表(サイズチャート)を公開しているので、自分の体を採寸して近いサイズを選べばいいのです。試着できる機会があればぜひ活用してください。いきなり高価なオーダーメイドを作る必要はありません。この記事では、ウェットスーツの種類と特徴、価格帯、そして既製品・オーダーメイド・レンタルの選び方を、私自身の遍歴を踏まえて解説します。
トライアスロン用ウェットスーツの種類
トライアスロン用ウェットスーツにはいくつかのタイプがあります。サーフィン用とは全く別物なので注意してください。トライアスロン用は腕の動きを妨げないよう設計されていて、素材も伸縮性と浮力を重視しています。
フルスーツ
手首と足首まで全身を覆うタイプです。浮力が最も高く、保温性も抜群。水温が低いレース(22度以下)では、ほぼ全員がフルスーツを着ています。デメリットは着脱に時間がかかることと、肩周りの可動域がやや制限されることです。ただし最近の上位モデルは肩の素材が薄く柔らかくなっていて、可動域の問題はかなり改善されています。
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ロングジョン(ノースリーブ)
足首までは覆いますが、腕がないタイプです。肩周りが完全にフリーなので、ストロークの自由度が高いのが特徴。フルスーツより着脱が楽で、トランジションの時間短縮にもなります。デメリットは腕の浮力がないこと。上半身のバランスはフルスーツより劣ります。水温が比較的高いレース(24度前後)で選ぶ人が多いです。

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ショートジョン
膝上まで、腕もないタイプです。浮力は最も低いですが、動きやすさは最高。水温が高いレース(26度以上)やウェットスーツが任意のレースで使う人がいます。初心者にはあまりおすすめしません。浮力のサポートが少ないからです。
各タイプの比較
| タイプ | 浮力 | 保温性 | 動きやすさ | 着脱のしやすさ | おすすめ水温 |
|---|---|---|---|---|---|
| フルスーツ | 高い | 高い | やや制限 | 時間かかる | 22度以下 |
| ロングジョン | 中程度 | 中程度 | 高い | 比較的楽 | 22〜26度 |
| ショートジョン | 低い | 低い | 最も高い | 楽 | 26度以上 |
実際にレース会場で周りを見ると、体感でフルスーツが9割、ロングジョンが1割ほどです。初心者を含め、大半の人はフルスーツを選んでいる印象です。
着用できるかは「水温」で決まる
意外と見落としがちですが、ウェットスーツを着られるかどうかは自分で決められません。レース当日の水温で、着用が「必須/推奨/任意/禁止」のどれになるかが大会規定で決まります。一般に水温が低いほど安全のため着用寄り、高いほど熱中症リスクから禁止寄りになります。
つまり「フルスーツを買ったのに当日は着用禁止だった」ということもありえます。閾値は大会や主催団体によって違うので、エントリー前に必ず大会要項で水温と着用ルールを確認してください。実際にオープンウォーターで泳ぐ感覚は第2回葉山オープンウォータースイムを泳いできましたにも書きました。
価格帯と選び方のポイント
エントリーモデル(3万〜5万円)
初心者が購入するならこの価格帯です。素材は若干硬めで、肩周りの柔軟性は上位モデルに劣りますが、浮力は十分にあります。年に2〜3レース出る程度なら、この価格帯で問題ありません。
ミドルレンジ(5万〜10万円)
素材が柔らかくなり、肩周りの動きやすさが向上します。パネル構造が工夫されていて、部位ごとに素材の厚さが変えてあります。泳ぎ込む人や、年に5レース以上出る人にはこのクラスをおすすめします。
ハイエンド(10万〜15万円)
プロや上級者が使うモデルです。素材の質感が全く違い、着ているのを忘れるくらい柔らかい。撥水コーティングで水の抵抗を減らすモデルもあります。正直に言うと、初心者がいきなりこのクラスを買う必要はありません。なお、後述するフルオーダーのウェットスーツは、価格帯としてはこのハイエンドと同等かそれ以上になることが多いです。
選び方のポイント
- 迷ったらフルスーツ: 浮力が味方になり、会場でも約9割がフルスーツです。動きやすさを優先するならロングジョンもありです(私は最初ロングジョンを3年使いました)。
- 試着が必須: 同じMサイズでもメーカーによって全然違います。通販で買うのはリスクが高いです。
- 首周りの圧迫感を確認: きついと泳いでいるうちに息苦しくなります。指1本入るくらいの余裕が目安です。
- 肩を回してみる: 試着時にクロールの動きをして、肩が引っかからないか確認します。
既製品・オーダーメイド・レンタル — どう手に入れるか
ウェットスーツの入手方法は、大きく「既製品を買う」「オーダーメイドで作る」「レンタルする」の3つに分かれます。初心者はまず既製品で十分ですが、それぞれの特徴を知っておくと選びやすいです。
既製品 — まずはここから
各メーカーが胸囲・身長・体重などの細かい寸法表(サイズチャート)を公開しています。自分の体を採寸して、表の数字に近いサイズがあれば既製品を買って問題ありません。サイズさえ合っていれば、フィット感はかなりのところまで出ます。

サイズチャートの例です。「ST(Small Tall)」のように、同じ身長帯でも体型に合わせて細かく分かれているのがわかります。私が最初に買った 2XU のロングジョンも、この ST でした(出典: 楽天市場の取扱ショップ)。
注意したいのは、サイズが合わないと泳いでいるうちに肌が擦れて痛くなることです。最初のスイムからいきなり不快な思いをすることになってしまいます。だからこそ採寸と、できれば試着が大切です。首周りや脇など擦れやすい部分には、肌擦れ防止のバームを塗っておくと安心です。

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商品サイズ 12.8グラム(0.45オンス)
私は試着の機会として、LUMINA(トライアスロン誌)が不定期に開催していた朝スイムでウェットスーツを試着させてもらったことがあります。こうしたイベントやショップの試着会があれば、積極的に活用したいところです。
オーダーメイド — フィットを突き詰めるなら
体に合わせて採寸して作るフルオーダーです。値段は既製品より高めですが、素材の質も良く、体にぴったりフィットします。
私が最初に買ったのは、2XU のロングジョン(ST)という既製品でした。これで3年ほどレースに出ていました。この ST モデルは今は終売ですが、2XU の現行ウェットスーツ(P:1 Propel など。記事上部のフルスーツの項にリンクを置きました)は今も定番です。ところがトレーニングを2年ほど続けるうちに体格が変わり、胸板が厚くなって既製品がフィットしなくなりました。そのタイミングでフルオーダーを作ることにしました。評判の良かった Hi-Ridge(東京・落合のトライアスロンプロショップ。全身21点を採寸してフルオーダーで作ってくれます)で作ったところ、素材も良く体にしっかりフィットして、スイムのタイムまで良くなりました。値段は張りましたが、満足度は高かったです。
もうひとつ大きな変化がありました。それまで「本番だけ」スイムスタート直後に過呼吸気味になる症状があったのですが、フルオーダーにしてから改善したのです。自覚症状はほとんどなかったものの、既製品がおそらくキツすぎて、胸の動きを無意識に妨げていたのだと思います。サイズが合っていないことの影響は、自分では気づきにくいところにも出ます。
体格が変わってきた人や、フィットを突き詰めたい人には、オーダーメイドは十分に検討の価値があります。
レンタル — 手軽だが送料に注意
多くのトライアスロンショップやレース大会がレンタルサービスを提供しています。
- 費用が安く見える: 1回3000〜8000円程度。ただし往復の送料を含めると意外と高くつくことがあります。
- サイズ違いを試せる: どのサイズが合うか分からない段階では参考になります。
- 保管場所が不要: ウェットスーツは意外とかさばります。シーズンオフの保管も地味に面倒です。
一方で、在庫に限りがあり、人気レースでは自分のサイズが残っていないこともあります。フィット感も汎用サイズなので購入には劣ります。私自身は、送料などを含めると結局割高になると感じて、レンタルは使いませんでした。採寸して既製品を買うほうが、長い目で見て納得感がありました。
サイズ選びの重要性
ウェットスーツのサイズ選びは、他のスポーツウェア以上にシビアです。きつすぎると呼吸困難になりますし、ゆるいと隙間から水が入って浮力が落ちます。
一番重要なのは胸囲(安静時とスイム時で違う)
私が個人的に一番重要だと思っているのは、胸囲です。ここで気をつけたいのは、安静時の胸囲と、泳いでいるときの胸囲が違うということ。スイムでは肺いっぱいに空気を取り込むので、胸まわりはかなり膨張します。
試着のときは、安静時に大きく息を吸ってみて、少しでも窮屈さを感じたらやめておいたほうがいいです。たとえば、プールで泳ぐときの空気の吸入率を100%とすると、少しきついだけで90%しか入らない、ということが起こります。すると単純計算でパフォーマンスが10%落ちます。つまりボトルネックが酸素になってしまうのです。

メーカーによっては、身長と体重のマトリクスからサイズを引く早見表もあります。境界付近のサイズで迷ったら、胸まわりの余裕を優先して選ぶと失敗が少ないです(出典: Y’s Road)。
私がフルオーダーにしてスタート直後の過呼吸が改善したのも、まさにこの胸まわりの圧迫が原因だったのだと思います。
きつすぎる場合の問題
- 胸郭が圧迫されて深呼吸ができない
- 泳いでいるうちに息苦しさが増す
- 首周りがきついと、パニックの引き金になる
- 肩が回しにくく、ストロークが制限される
私の知り合いで、「きつい方がフィットして速いはず」と思ってワンサイズ下を買った人がいます。結果、レース中に息苦しくなってリタイアしました。見ていて怖かったです。
ゆるすぎる場合の問題
- 隙間から水が大量に入る(フラッシング)
- 浮力が本来の性能を発揮しない
- 泳ぐたびにスーツがずれて気になる
- 脱ぐときに引っかかって時間がかかる(意外な落とし穴)
正しいサイズの感覚
- 陸上で着たときは「やや窮屈」くらいがちょうどいいです。水中に入ると素材が伸びて馴染みます。
- 首周りは指1本分の余裕。2本入るようだと緩いです。
- 脇の下に大きな隙間がないこと。ここが空くと水が入ります。
- しゃがんだり腕を回したりして、動きに極端な制限がないか確認します。
個人的には、ショップで試着するときに「5分くらい着たまま動いてみてください」と言われました。最初は良くても、時間が経つと圧迫感が出てくることがあるからです。この助言は的確でした。
着脱は意外と難しい
ウェットスーツの着脱は思いのほか手こずります。特にレース会場は気温が高く、汗ばんだ肌にはスーツが張り付いてとても着づらいです。本番でいきなり焦らないよう、事前に何度か着脱を練習しておくといいです。
そして、生地をつまんで強く引っ張るのは厳禁です。ネオプレンは薄くて繊細なので、爪を立てたり、つまんで引っ張ったりするとすぐに切れてしまいます。指の腹で少しずつたぐり寄せるように着るのがコツです。これは長持ちさせるうえでも重要です。
ウェットスーツのメンテナンス
長く使うための基本のケアを書いておきます。
- 使用後は真水でしっかり洗います。海水の塩分を残すと素材が劣化します。
- 直射日光で干さない。日陰で、ハンガーにかけて自然乾燥させます。
よくある質問
最初の1着は既製品とオーダーメイドのどちらがいい?
初心者はまず既製品で十分です。各メーカーが細かい寸法表を公開しているので、採寸して近いサイズを選べば失敗しにくいです。レンタルもありますが、往復の送料を含めると割高になることがあります。体格が変わってフィットしなくなってきたら、その段階でオーダーメイドを検討すればいいでしょう。
フルスーツとロングジョンのどちらを選ぶべき?
初心者はフルスーツを選んでほしいです。腕まで覆うぶん浮力が高く、泳ぎに不安がある段階では浮力が大きな味方になります。ロングジョンは泳ぎに慣れて、肩の自由度を優先したくなった2着目以降で十分です。
サイズはきつめとゆるめのどちらがいい?
陸上で「やや窮屈」と感じるくらいが正解です。水中に入ると素材が伸びて馴染みます。ただしワンサイズ下げるのは危険で、胸郭が圧迫されて呼吸が苦しくなります。逆にゆるいと隙間から水が入って浮力が落ちます。必ず試着して、首周りに指1本分の余裕があるかを確認してください。
ウェットスーツは何年くらい使える?
使用後に真水で洗い、日陰でハンガー干しすれば数シーズンは持ちます。逆に塩分を残したまま放置すると劣化が早まります。着脱時に生地をつまんで引っ張ると裂けることもあり、寿命を縮める原因になります。
まとめ
- ウェットスーツはフルスーツ、ロングジョン、ショートジョンの3種類。会場ではフルスーツが約9割で、浮力の高いフルスーツが初心者にも安心です。
- 入手方法は既製品・オーダーメイド・レンタルの3つ。初心者はまず既製品で十分。寸法表どおりに採寸して近いサイズを選びます。
- サイズが合わないと肌擦れや呼吸の妨げになります。とくに胸囲は安静時とスイム時で違うので、大きく息を吸って窮屈でないか確認します。
- 体格が変わってフィットしなくなったらオーダーメイド(フルオーダー)を検討。私は Hi-Ridge で作り、タイムも上がり、スタート直後の過呼吸気味の症状まで改善しました。
- 使用後は真水で洗って日陰干し。着脱時に生地を引っ張ると裂けるので、指の腹で扱います。