OWSが怖い人へ — プールとオープンウォーターの決定的な違い

結論:OWSが怖いのは正常な反応#

トライアスロンを始めようと思ったとき、多くの人が最初にぶつかる壁がオープンウォータースイム(OWS)です。プールで1500m泳げる人でも、海や湖で泳ぐとなると途端に不安になります。正直に言うと、私もそうでした。

プールでは25mごとに壁があり、いつでも止まれる。足がつく場所がある。水は透明で、隣のレーンの人とぶつかることもない。OWSはその全てが逆です。怖いのは当たり前です。この記事では、プールとOWSの違いを整理し、私がレースで過呼吸になった経験から学んだ対処法を紹介します。

プールとOWSの決定的な5つの違い#

1. 視界がゼロに近い#

プールでは水中にラインが見えるし、前方も確認できます。しかしOWSでは、特に海の場合、顔をつけた瞬間に視界がほぼゼロになることがあります。濁った水の中で方向感覚を失う恐怖は、経験しないとわかりません。湖でも透明度は場所によってまちまちで、水深2mでも底が見えないことはザラです。

2. 水温の差が体に来る#

プールは通常28〜31度に管理されています。一方でOWSは、6月の海でも18〜22度程度のことが多いです。水温が低いと体が硬直し、呼吸が浅くなります。ウェットスーツを着ていても、顔に冷水が当たった瞬間のショックは大きいです。

3. 波とうねりの存在#

プールには波がありません。OWSでは穏やかな日でも小さなうねりがあり、息継ぎのタイミングで波を飲むことがあります。海水を飲んで咳き込むと、さらにパニックが加速する悪循環に陥ります。

4. 他の選手との接触(バトル)#

レース本番では、数十人から数百人が一斉にスタートします。手や足がぶつかるのは当たり前で、ゴーグルを蹴られて外れることもあります。プールの整然としたレーンスイムとは全く違う世界です。このバトルが、後述する私の過呼吸の引き金になりました。

5. 足がつかない恐怖#

個人的には、これが大きいです。プールなら疲れたら壁に掴まれます。OWSでは水深5m、10mの場所で泳ぎ続ける必要があります。「もし足がつったらどうしよう」「体力が尽きたらどうしよう」という恐怖が、泳ぎのリズムを崩します。

初レースのスイムで過呼吸になった話#

私がOWSの怖さを思い知ったのは、初レース(横浜トライアスロン)のスイムパートでした。プールではそれなりに泳げていたので大丈夫だろうと思っていたのですが、本番は別物でした。

スタート直後、周りの選手との接触(バトル)が始まりました。手や足がぶつかり、思うように息継ぎができない。「息継ぎのタイミングで水を飲むかもしれない」「呼吸できないかもしれない」という恐怖から、だんだん呼吸が浅くなっていきました。

原因は、恐怖で息をしっかり吐き切れていなかったことだと思います。人は息を「吸う」ことばかり意識しがちですが、しっかり吐かないと次に十分吸えません。吐けていないまま吸おうとして、どんどん苦しくなる——典型的な過呼吸の状態です。

そこで意識的にやったのが、ペースを大きく落として、息を吐き切ることでした。クロールのたびに、水中でしっかりブクブクと息を吐く。それを意識したら、少しずつ呼吸が整ってきて、なんとか立て直せました。結果として初レースは完走できました。あのとき「吐く」ことに意識を向けられたのが分かれ目でした。

克服のためにやった3つのこと#

1. 「吐く」呼吸を体に染み込ませる#

過呼吸を防ぐ一番のコツは、息を吐き切ることです。水中で鼻と口からしっかり息を吐き、息継ぎでは「吸う」だけの状態を作ります。プールの練習段階から、水中でブクブクと長く吐く練習をしておくと、本番で恐怖を感じても呼吸が崩れにくくなります。クロールのドリルと合わせて、呼吸のリズムを染み込ませておくのが有効です。

2. ウェットスーツの浮力を信じる#

OWSの恐怖を和らげてくれる最大の味方がウェットスーツです。トライアスロン用は浮力が非常に高く、力を抜いても体が浮きます。練習で「力を抜いて仰向けに浮いてみる」ことを体験しておくと、パニックになりかけたときに「止まって浮けばいい」と思えるようになります。

なお、ウェットスーツのサイズが合っていないと、逆に呼吸を妨げることがあります。私は既製品がきつすぎて胸の動きが制限され、スタート直後に息苦しくなっていた時期がありました。フルオーダーにしたら改善した話をウェットスーツの選び方に書いています。初めての1着は既製品で十分です。

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3. ヘッドアップクロールを練習する#

OWSでは方向確認のためにヘッドアップ(前を向いて泳ぐ動作)が必須です。最初はヘッドアップするたびに体が沈んで余計に疲れますが、コツは顎を引いたまま目線だけ前に上げること。首を大きく持ち上げると下半身が沈みます。プールで4〜6ストロークごとにヘッドアップする練習を繰り返すと、方向がわかる安心感が生まれ、パニックになりにくくなります。

OWSでは曇り止め付きで視界の広いゴーグルがあると、方向確認が楽になり安心感が増します。屋外でも使えるレーシングゴーグルが定番です。

ひとつ私のゴーグル管理術を紹介します。新品のゴーグルはまずレースで1〜2回使い、その後は練習用に降格させるローテーションにしています。新品から数回はレンズが全く曇らず、傷も入っていないので視界がとても快適だからです。視界がクリアだと方向確認もしやすく、OWSの不安が減ります。レースのたびに少しもったいない気もしますが、本番での快適さと安心感には代えられません。

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OWSの練習ができる場所とイベント#

OWSの練習機会は意外とあります。

  • トライアスロンショップ/クラブ主催の練習会: 5〜9月に定期開催されることが多い。ライフセーバーがいる安心感があり、同じ不安を抱えた仲間と練習できる
  • 各地のOWSイベント: 葉山、館山、お台場など、関東だけでも複数の会場で練習会やレースが開催されている。レースに出なくても練習の部だけ参加できるものもある
  • 海水浴場: 夏場はライフセーバーがいる遊泳区域で泳げる。区域を守ること

まず練習会に2〜3回参加してOWSの感覚に慣れてからレースに出るのがおすすめです。いきなり本番だと、練習不足の不安がパニックの引き金になります。

それでも怖い人へ#

OWSの恐怖は、回数を重ねれば必ず和らぎます。ゼロにはならないかもしれませんが、コントロールできるレベルにはなります。私もロングのスイムでは今でもスタート前に緊張します。でも「苦しくなったら吐くことに集中する」「止まって浮けばいい」「平泳ぎに切り替えればいい」という引き出しを持てたことで、パニックにはならなくなりました。

最初は平泳ぎでもいいんです。完走できれば勝ちです。タイムを気にするのは2レース目から。OWSの恐怖を乗り越えた先に、プールでは味わえない海や湖を泳ぐ開放感が待っています。

湘南オープンウォータースイミングのフィニッシャーメダルを浜辺で掲げたところ。怖いと思っていたOWSも、慣れてしまえば完走できる。この開放感はプールでは味わえない

よくある質問#

Q. 泳いでいる途中で息が苦しくなったらどうすればいい?

まずペースを落として、息を「吐く」ことに集中してください。苦しさの多くは吐き切れていないことが原因です。それでも苦しければ、立ち泳ぎや平泳ぎに切り替えて呼吸を整えます。ウェットスーツがあれば浮くので、慌てて泳ぎ続ける必要はありません。

Q. バトルが怖いです。回避する方法は?

スタート位置を集団の後方や端に取ると、接触が大幅に減ります。タイムを狙わない初レースなら、わざと数秒遅れてスタートするのも有効です。慣れるまでは無理に前方に行かないことをおすすめします。

Q. ゴーグルが外れたら?

立ち泳ぎで止まって付け直せば大丈夫です。慌てないこと。心配ならスタート前にストラップをしっかり締め、ゴーグルをスイムキャップの下にする人もいます。

Q. 平泳ぎで完走しても大丈夫?

全く問題ありません。OWSのルール上、泳法は自由です。クロールにこだわらず、苦しくなったら平泳ぎで進めばいいんです。完走が最大の目標です。

まとめ#

  • プールとOWSは視界・水温・波・接触・水深の全てが違う。怖いのは当然の反応
  • 私は初レースのスイムで、バトルの恐怖から息を吐き切れず過呼吸になった。ペースを落として「吐く」ことに集中して立て直した
  • 過呼吸を防ぐ鍵は「吐く」呼吸。プール練習から水中でしっかり吐く癖をつけておく
  • ウェットスーツの浮力を信じる。サイズが合っていないと逆に呼吸を妨げるので注意
  • まずOWS練習会に2〜3回参加して慣れてからレースへ。完走できれば勝ち
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