大人から始めるクロール — 効率よく泳ぐために最初にやるべきドリル3つ

結論:最初にやるべきドリルは3つだけ#

大人がクロールを効率よく泳げるようになるには、ドリル練習が最短ルートです。キャッチアップドリル・片手クロール・サイドキックドリル——この3つを毎回の練習に組み込むだけで、フォームが変わります。距離を泳ぐ前に技術を磨くこと。それが結果的に一番の近道です。

大人のクロールは力任せになりがち#

トライアスロンを始めるにあたって、スイムが最大の壁だという人は多いです。特に大人になってからクロールを本格的に習う場合、子供の頃に覚えた自己流のフォームが染みついていて、効率の悪い泳ぎになっていることがほとんどです。

私もその一人でした。学生時代は水泳部でもなく、25mプールをなんとかクロールで泳げる程度。トライアスロンを始めたとき、力いっぱい腕を回しているのに進まない。50mを超えると息が上がって、50m連続で泳ぐのがやっとでした。

スイムスクールに入って最初に教わったのは、豪快なドリルではなく「蹴伸び」でした。壁を蹴ってまっすぐ伸びた姿勢を保つだけ。それだけなのに、「水の抵抗がいかに推進力を殺しているか」がはじめて体感できました。スクールで教わるドリルの多くは、この「抵抗を減らす」という一点に集約されます。

この記事では、私がスクールで教わり実際に効果を実感した3つのドリルを紹介します。

コースロープで区切られたプール。ドリル練習はコース1本あれば十分。週2回の練習でフォームは確実に変わっていく

ドリル練習に特別な道具はほぼ必要ありません。ゴーグル1つあれば始められます。国内トライアスリートにもよく使われているのがVIEWのレーシングゴーグルです。くもり止め、UVカット、ミラー加工と機能が揃っていて、屋外OWSでも使えます。

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大人がクロールで陥る3つの典型的な問題#

力で泳ごうとする#

大人は子供より筋力がある分、力任せに水を掻いてしまいます。水を「押す」のではなく「キャッチして引く」感覚がないと、いくら腕を回しても推進力に変わりません。私も最初の頃は、泳いだ後に肩がバキバキになっていました。力んでいる証拠です。

息継ぎで体が沈む#

息継ぎの瞬間に頭を大きく持ち上げる人が多いです。頭を上げると腰が沈み、水の抵抗が一気に増えます。正しい息継ぎは頭を横に回すだけ。水面ギリギリで口だけ出す感覚なのですが、これが怖くてつい頭を上げてしまいます。

余談ですが、初レースのスイムでは息継ぎの恐怖が別の形で出ることもあります。周りの選手との接触(バトル)で息継ぎのタイミングを崩され、過呼吸気味になった経験があります。初レースの詳細はこちらに書きました。

キックが非効率#

バタ足を一生懸命やっているのに進まない。膝から下だけでキックしていたり、力を入れすぎて水しぶきだけ上がっている状態。トライアスロンのスイムでは、キックは推進力の補助程度で、メインは上半身のストロークです。キックに体力を使いすぎると、バイクとランに響きます。

大前提:蹴伸びで「抵抗を感じる体」を作る#

ドリルの前に、まず蹴伸びを徹底します。壁を蹴って、両腕を耳の横に揃えて伸ばし、まっすぐ滑るだけです。このとき「どこで失速するか」を意識してください。頭が上がっていたり、腰が沈んでいたり、手が開いていたりすると、抵抗で急激に止まります。

効率のいい泳ぎとは、ストロークで生んだ推進力を無駄なく前進に変えることです。蹴伸びで抵抗を感じる体になってから、はじめてドリルが意味を持ちます。

抵抗を減らすドリル3つ#

ドリル1: キャッチアップドリル#

目的: ストロークのタイミングと体の回転(ローリング)を身につける

やり方:

  1. 片手を前に伸ばした状態でスタート
  2. もう片方の手でストロークし、前に伸ばした手に追いつく(タッチする)
  3. 手が揃ったら、今度は反対の手でストロークする
  4. これを繰り返して25m泳ぐ

ポイント: 手が前で揃うまで次のストロークを始めないことです。焦って早く回すと意味がありません。前に伸ばしている時間が長いほど、体が伸びた姿勢(ストリームライン)を意識できます。

私がスクールで一番多く練習したのがこのキャッチアップドリルです。次のドリル2で紹介するチェンジオーバーと合わせて繰り返したら、明らかに1掻きで進む距離が伸びました。ストローク数が減るということは、効率が上がったということです。泳ぎの効率を数値で把握したい方はSWOLF(ストロークとタイムを足した指標)も参考になります。

ドリル2: チェンジオーバー + 3回に1回の息継ぎ#

目的: 左右均等な息継ぎのリズムと、ストロークの切り替えタイミングを身につける

やり方:

  1. キャッチアップと同様に、片手が前に揃うタイミングで反対の手をストロークする(チェンジオーバー)
  2. 息継ぎは3ストロークに1回、左右交互に行う(1回右、次は左、と交互)
  3. 焦らず、リズムよく25mを泳ぐ

ポイント: 3回に1回の息継ぎはトライアスロンのスイムで特に重要です。片側だけで息継ぎする癖がつくと、OWSで波や選手の接触があったときに対応できません。左右どちらでも息継ぎできるよう、練習段階から意識して身につけておくことをおすすめします。

最初は3ストロークのリズムが取りにくいですが、チェンジオーバーで手のタイミングを意識しながら泳ぐと自然とリズムが合ってきます。慣れてきたら5回に1回に増やすこともできます。

ドリル3: プルブイドリル#

目的: 体幹の安定・入水位置の修正・上半身主体の泳ぎを強制的に身につける

やり方:

  1. プルブイを太ももか股のあたりに挟む
  2. キックをしない状態でクロールを泳ぐ
  3. 浮力はプルブイに任せ、推進力は腕のストロークだけで生み出す
  4. 25mを繰り返す

ポイント: プルブイで足が浮くことで、キックに頼らず上半身だけで前に進む状況が強制的に作られます。キックで体を浮かせようとする癖がなくなり、体幹と入水位置の調整に集中できます。「腕だけでどれだけ進めるか」を意識しながら泳いでください。

トライアスロンのスイムでは、バイクとランに体力を温存するためにキックを最小限に抑えるのが基本です。このドリルはその泳ぎ方を体に覚えさせるのに直結しています。

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スイムスクール vs 独学#

私はトライアスロンを始めてしばらくしてから、スイムスクールに通い始めました。月数回のレッスンで月謝は数千円〜1万円台が目安です。最初は「高いな」と思いました。

しかし結果的に、スクールに通って良かったと断言できます。独学で何ヶ月やっても上達しなかったのが、スクールに通い始めて2〜3ヶ月で明確に変わりました。

独学の問題は、自分のフォームが見えないことです。「ちゃんと泳げている」と思っていても、コーチに見てもらうと問題だらけです。私の場合、指摘されたのは「入水が浅くて狭い」「プッシュの抜きが早い(腕を最後まで伸ばしきれていない)」「キャッチアップができていない」の3点でした。どれも自分では全く気づいていませんでした。面白いのは、キャッチアップドリルが、まさに3つ目の欠点を直すためのものだということです。

最近はスマホの防水ケースを使って水中動画を撮る方法もありますが、やはりリアルタイムで修正してくれるコーチの存在は大きいです。予算が許すなら、最初の半年だけでもスクールに通うことをおすすめします。

おすすめコーチ:井上優コーチ(Lumina)#

私がトライアスロンをやっていた期間、ずっと通い続けたのが 井上優コーチのOWS練習会 です。

井上コーチは日本体育大学在学時に競泳男子のキャプテンを務め、北島康介らとともにチームを牽引した経歴を持つ本格派のスイマーです。現在はOWSのスペシャリストとして、LuminaのスイムスクールやOWS練習会で指導しています。「論理的で分かりやすい」と受講者から定評のある指導スタイルで、トライアスリートへの実績も豊富です。

関東在住でスイムを本格的に鍛えたい方には強くおすすめします。速くなるための「泳ぎ込み」ワンポイント・アドバイス(Lumina)も参考になります。

泳ぎが速くなるとどう変わるか#

フォームが改善されると、タイムが速くなるだけでなく、泳いだ後の疲労感が劇的に減ります。最初の頃は50mを泳ぐだけでゼーゼーしていたものが、フォームが整ってくると400mを泳いでも余裕が出てきます。

注目してほしいのは「楽になること」です。速くなる前に楽になる——これがフォーム改善の本質です。

そしてドリルを続けていくと、ある日ふと「水の上を滑っている」ような感覚になる瞬間があります。力を入れていないのに前に進む。これが抵抗を減らした泳ぎの感覚です。その感覚を一度でも体感できたら、あとは再現するだけです。

水中から見上げた泳ぎのイメージ。抵抗を減らした泳ぎは、水に溶け込むように進む感覚がある

1500mのタイムトライアル記録に具体的な数字を残しているので、参考にしてください。

距離より技術が先#

トライアスロンのスイムは1500m(オリンピックディスタンス)。初心者はどうしても「1500m泳ぎ切れるか」という不安から、距離を泳ぐ練習ばかりしてしまいます。気持ちはわかりますが、技術が伴わないまま距離を泳いでも、悪いフォームが定着するだけです。

個人的には、距離を泳ぐより技術を磨く方が先だと考えています。100m連続で泳げるなら、フォームさえ良ければ1500mは泳げます。体力の問題ではなく、効率の問題です。100mでバテるのは、無駄な動きが多くて酸素を消費しすぎているからです。

ドリルで正しいフォームを身につけてから距離を伸ばす。遠回りに見えますが、これが結果的に一番の近道です。

よくある質問#

Q. 全く泳げない状態からでもトライアスロンに出られますか?

出られます。ただし「25mを止まらずに泳げること」が最低ラインです。まずはクロールで25mを泳げるようにすることを目標にしてください。そこまで到達できれば、ドリルでフォームを磨いて距離を伸ばせます。

Q. ウェットスーツがあれば下手でも泳げますか?

浮力は格段に上がるので助かります。しかしフォームの問題は解決しません。ウェットスーツを着ても力任せに泳いでいれば疲弊します。技術とウェットスーツは両輪です。

Q. スイムスクールはトライアスロン専門でないといけませんか?

一般の水泳スクールでも基礎は学べます。ただしトライアスロン専門スクールは「OWS(オープンウォータースイム)特有のバトル対策」「省エネな泳ぎ方」など、レースに特化した指導をしてくれます。最初に通うなら専門スクールをおすすめしますが、まずは近くで通えるスクールを選ぶことが大事です。

Q. プールでの練習とOWSはどう違いますか?

プールはコースロープで姿勢が安定しますが、OWSはブイを目標に直進する技術が必要です。また、他の選手との接触もあります。プールでフォームを固めてから、レース前に数回OWSで練習しておくのが理想的です。

まとめ#

  • 大人のクロールは力任せ・息継ぎの沈み・非効率なキックの3つが典型的な問題
  • キャッチアップドリル、片手クロール、サイドキックドリルの3つを毎回の練習に組み込む
  • 独学には限界がある。最初の半年だけでもスイムスクールに通う価値は十分にある
  • フォームが改善されると速くなるだけでなく、疲れにくくなる。「楽になること」が先にくる
  • 距離を泳ぐ練習より、ドリルで技術を磨く方が先。100m泳げるなら1500mは泳げる
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