初レースまで12週間 — 3種目バランス型トレーニングプラン

12週間あれば初レースは完走できる#

「トライアスロンに出てみたいけど、何から始めればいいかわからない」。これは私が最もよく受ける質問です。答えはシンプルで、12週間のトレーニング計画を立てて、それを淡々とこなすこと。才能は関係ありません。計画どおりに練習すれば、オリンピックディスタンス(1.5km/40km/10km)は完走できます。

ただし、3種目の配分を間違えると痛い目に遭います。私自身、初レースに向けてバイクとランの練習ばかりしてスイムを後回しにした結果、当日のスイムパートで過呼吸になって本当に苦しい思いをしました。原因は、まわりの選手との接触(バトル)で「息継ぎができなくなるかもしれない」という恐怖から、息をしっかり吐き切れていなかったことだと思います。ペースを大きく落とし、意識して息を吐き切るようにして、なんとか立て直しました。

それでも、初レース(オリンピックディスタンス)はちゃんと完走できました。私の初レースの記録はこうです。

  • 総合タイム 2:35:32(総合236位)
  • スイム 28:02 / バイク 1:10:25 / ラン 57:05

ランが57分とかなり遅いのは、実はコースで1周多く走ってしまったから。コースの周回数を勘違いするという、初歩的だけどありがちなミスです。こうした失敗も込みで「初レースとはこういうもの」ですが、それでも完走はできます。この記事では、そんな失敗を踏まえた12週間のトレーニングプランを紹介します。

私が実際にやった初レースまでの練習#

参考までに、私自身の初レースまでの流れを書いておきます。2014年1月にトレーニングを開始し、同年5月の横浜トライアスロンで完走しました。だいたい4か月、本記事の12週間に近い期間です。実際にこなしていたのは、ざっくり次のようなメニューです。

  • 朝スイム 週2回(各1.5時間) — これが練習の柱
  • 平日バイク 週2回(各30分)/ラン 週2回(各30分) — 短時間でも頻度を確保
  • 週末:ロングライド1本+適当にラン

平日は朝を中心に短く、週末にロングライドでまとめて持久力を稼ぐ、という社会人らしい組み立てです。完璧なプランでなくても、これくらいの積み重ねで初レースは十分完走できます。

ちなみに、この期間に体も変わりました。下は当時(2014年3〜5月)の体重の記録です。トレーニングを積むうちに、レースに向けてじわじわ絞れていったのがわかります。

2014年3〜5月の体重推移グラフ。初レースに向けたトレーニング期間中、体重が徐々に落ちていった

3種目を並行して管理するなら、スイム・バイク・ランすべてを記録できるGPSマルチスポーツウォッチがあると便利です。私もトレーニングとレースの両方で愛用しています。練習の積み上げが数字で見えると、モチベーションの維持にもつながります。

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全体の3フェーズ設計#

12週間を4週間ずつの3フェーズに分けます。各フェーズの目的を明確にすることで、「今日は何をすべきか」で迷わなくなります。

  • Phase 1(1〜4週):基礎構築期。スイムに重点を置く
  • Phase 2(5〜8週):持久力養成期。バイクに重点を置く
  • Phase 3(9〜12週):レース準備期。ブリック練習とテーパリング

なぜこの順番なのか#

最初の4週間でスイムに集中する理由は明確です。バイクとランは、最悪ぶっつけ本番でもなんとかなります。ペースを落とせば歩けますし、止まれます。しかしスイムだけは別です。足がつかない場所で泳げなくなったら、安全に関わる問題になります。

正直に言うと、バイクは普段から自転車に乗っている人ならODの40kmは完走できますし、ランも10kmなら走れる人は多いです。でも1.5kmの連続スイムは、泳ぎ慣れていない人にとって大きな壁です。だからスイムを最優先にします。

Phase 1(1〜4週):基礎構築期 — スイム重点#

目標#

  • スイム:1500mを止まらずに泳げるようになる
  • バイク:60分を楽に漕ぎ続けられる持久力
  • ラン:30分を楽に走り続けられる持久力

週間スケジュール例#

曜日種目内容時間
スイムドリル+距離泳45分
ランゆっくりジョグ30分
スイム距離泳(インターバル)45分
バイク有酸素ペースで45分
休養完全休養 or ストレッチ-
スイムOWS練習会 or プールでロング60分
バイク or ラン長めに有酸素60〜90分

週の練習時間は合計5〜7時間程度です。週3回のスイムが入っているのがポイントで、この時期にスイムの基礎を叩き込みます。

スイムのポイント#

1500mを泳ぎ切れない人は、100m泳いで10秒休むインターバルから始めます。100m × 10本を何セッションかこなすうちに、連続で500m泳げるようになります。500m泳げたら、あとは距離を伸ばすだけです。息継ぎのリズムと力を抜くことを意識します。全力で泳ぐ必要はありません。

プールで連続して1500m泳げたときは、フォームはまだまだでしたが「止まらず泳げた」という事実が大きな自信になりました。タイムを測ってみたい段階になったら、1500mスイムのタイムトライアルのように一度通しで計測してみると、自分の現在地がはっきりします。ちなみに私のプールでの1500mタイムトライアルは24分ほど。初レースのスイム(OWS・ウェットスーツ・バトルあり)は28分でしたから、本番は環境のぶんだけ時間がかかると見ておくといいです。

なお、プールで泳げてもオープンウォーター(OWS)は別物です。足がつかない・底が見えない・他の選手と接触する(バトル)、といった要素が加わります。プールにはない、OWSならではのスキルも必要になります。

  • ヘッドアップ(サイティング):数ストロークに一度、顔を前に上げて進行方向を確認する技術。これをしないと、まっすぐ泳げずコースを大回りしてロスします
  • バトルの対処法:集団の中で叩かれたり乗られたりしたときに、慌てず位置を取り直す動き
  • 泳ぎながら休む方法:背浮きや平泳ぎ・横泳ぎに切り替えて呼吸を整え、苦しくなっても止まらず進み続ける技術

オープンウォータースイムの会場。プールと違い、足のつかない海で多くの選手と一緒に泳ぐ

これらは独学だと身につけにくいので、トライアスリート向けの朝スイム練習会に参加するのを強くおすすめします。あちこちで開催されていて、コーチや経験者から泳ぎを見てもらえるうえ、機材や大会のことまでいろいろ質問できて情報が一気に増えます。私自身、朝スイムで得た情報や仲間は本当に大きかったです。土曜のロングスイムは、こうした練習会やOWSの場をうまく使ってください(第2回葉山オープンウォータースイム湘南OWS 10km のように、OWSの大会・練習会は各地で開かれています)。

ここで、私の初レースの失敗から得た一番の教訓を共有します。それは**「息をしっかり吐き切ること」**です。私はスタート直後のバトルで「息継ぎができなかったらどうしよう」という恐怖にとらわれ、無意識に息を止め気味になっていました。その結果、息を吐き切れずに過呼吸になり、超辛い思いをしました。対処法はシンプルで、水中で長くゆっくり息を吐き切ること。吐き切れば、次の息継ぎで自然と深く吸えます。プール練習のうちから「吸う」より「吐く」を意識して、呼吸のリズムを体に染み込ませておきましょう。OWSの恐怖そのものについては別の記事でも詳しく扱う予定です。

Phase 2(5〜8週):持久力養成期 — バイク重点#

目標#

  • スイム:1500mを安定して泳げる(30分前後)
  • バイク:2時間以上を快適に漕げる持久力
  • ラン:60分を走り続けられる持久力

週間スケジュール例#

曜日種目内容時間
スイム維持目的。ドリル+1000m40分
ラン40〜50分ジョグ45分
バイク有酸素ペースで60分
スイム1500m通し or インターバル45分
休養完全休養-
バイクロングライド90〜120分
ラン60分ジョグ(LSD)60分

週の練習時間は合計6〜8時間程度に増えます。バイクが週2回に増え、週末にロングライドを入れます。

バイクのポイント#

ODのバイク40kmは、時速25〜30km/hで走れば80〜100分です。週末に2時間程度のライドをこなしていれば、レース当日に困ることはありません。この時期に大事なのは、レースで使う機材に慣れることです。DHバーを使うなら練習で使い込んでおきます。ドリンクボトルの取り出し方、ギアチェンジのタイミング、補給食の食べ方も練習に組み込みます。

特に走りながらの給水は意外と難しく、慣れていないとボトルを取ろうとしてバランスを崩しがちです。レース本番で初めてやるのは危険なので、練習で何度もやっておきましょう。ハイドレーションの設置位置によっても取りやすさ・空力が変わります(ハイドレーションの設置場所による空気抵抗の違い)。

ロングライドはコースの景色も楽しみのひとつ。週末のロングライドで持久力と補給の両方を練習する

そして、週末のロングライドは絶好の「補給の練習」の場です。レース中に何を・いつ・どれくらい食べるかは、本番でいきなり試すと胃が受け付けなかったり気持ち悪くなったりします。ロングライドのうちに補給食(ジェルなど)を実際に口にして、味の好み・飲み込みやすさ・補給するタイミングを体で確かめておきましょう。ジェルは製品ごとに味も濃さも全然違うので、まずはお試しセットでいくつか試して、自分に合うものを見つけるのがおすすめです。補給の量やタイミングの考え方はロングの補給と給水も参考にしてください。

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Phase 3(9〜12週):レース準備期 — ブリック練習とテーパリング#

目標#

  • ブリック練習(バイク→ラン)でトランジションに慣れる
  • レースペースでの練習
  • 最終2週間でテーパリング(練習量を落として体を回復させる)

週間スケジュール例(9〜10週)#

曜日種目内容時間
スイムOWS想定の練習40分
ランレースペース走40分
バイクレースペースで60分
スイム1500mタイムトライアル40分
休養完全休養-
ブリックバイク60分→ラン20分80分
ラン or スイム軽めの調整40分

ブリック練習の重要性#

バイクを降りた直後にランを始めると、脚が全く動きません。ゼリーのようにグニャグニャした感覚で、最初の1〜2kmはまともに走れません。これは誰もが経験することで、「バイクレッグ」と呼ばれています。

ブリック練習をやっておくと、この感覚に慣れることができます。バイク60分の後にラン20分を走るだけでも効果は大きいです。私は初レースではブリック練習をほとんどやらずに本番を迎え、T2(バイクからランへのトランジション)直後のランがまったく脚が動かず、普段の練習からは考えられないスローペースになってしまいました。この「最初の数km」の失速は、ブリック練習で確実に小さくできます。

ちなみに、トランジションそのものの動作や時短については別記事にまとめています(トランジションで5分損する人、1分で済む人の違いトランジションエリアのセッティング完全ガイド)。練習の段階からトランジションの動線を意識しておくと、本番で慌てません。

テーパリング(11〜12週)#

レース前の1〜2週間は練習量を落とします。これをテーパリングと言います。目的は体を回復させ、レース当日にフレッシュな状態で臨むことです。

具体的には、強度は維持しつつ、練習量(距離や時間)を通常の50〜70%に減らします。例えば、普段60分走っているランを30〜40分に、2時間のバイクを60〜90分に短縮します。

「練習量を落とすとフィットネスが下がるのでは」と不安になる気持ちはわかります。私も最初は怖かったです。しかし、12週間かけて積み上げた体力は1〜2週間では落ちません。むしろ、疲労が抜けることで本番のパフォーマンスは上がります。個人的には、テーパリングをしっかりやったレースとやらなかったレースでは、本番の動きの軽さがはっきり違うと感じています。

レース週のスケジュール例#

曜日種目内容時間
スイム軽く1000m25分
ラン軽く20分ジョグ20分
バイク軽く30分30分
休養完全休養-
スイム軽く500m(動き確認)15分
休養レース前日。移動、受付、機材チェック-
レース本番-

レース前日にやることは、トランジションのセッティングや機材チェックなど意外と多いです。前日の動き方はトランジションエリアのセッティング完全ガイドにまとめたので、あわせて読んでおくと当日に慌てません。

3種目の配分の考え方#

3種目のどれに時間を割くかは、自分の弱点で決めます。水泳経験者ならスイムの割合を減らしてバイクとランに振ればいいですし、ランナー出身ならスイムとバイクに集中すればいいでしょう。

自分の弱点がどこかを客観的に知りたいときは、過去のレース結果を偏差値で分析する方法もあります(「偏差値」で弱点を克服する)。スイム・バイク・ランのどこで差をつけられているかが数字でわかると、練習配分の判断がしやすくなります。

ただし、初心者に共通して言えるのは、スイムに最も多くの時間を投資すべきだということです。理由は3つあります。

  1. 安全面:スイムだけは「止まれない」種目です
  2. 技術依存度:スイムは体力より技術でタイムが変わります。短期間でも正しいフォームを身につければ大幅に改善します
  3. 精神的ハードル:OWSの恐怖を克服するには、ある程度の練習量が必要です

個人的には、練習時間の配分はスイム40%、バイク30%、ラン30%くらいで始めて、スイムに自信がついてきたらバイクとランの割合を増やすのがいいと思っています。

正直に告白すると、**私自身の実際の練習配分はスイム20%・バイク50%・ラン30%**と、スイムが少なめでバイクに偏っています。だからこそ初レースのスイムで過呼吸になって苦しんだわけで…、この点は反面教師にしてください。バイクが好きだと、つい乗る時間が増えてしまう。その気持ちはよくわかりますが、初心者のうちは私のマネをせず、スイム優先で組むことを強くおすすめします。

休息日の重要性#

週に1〜2日は完全休養日を設けます。これは怠けではなく、トレーニングの一部です。体は練習中ではなく休んでいる間に強くなります。超回復の原理と呼ばれるもので、適度な負荷と十分な休息のサイクルがフィットネスを向上させます。

休養日にやるべきことは3つです。

  • 十分な睡眠(7〜8時間)
  • ストレッチやフォームローラーでのセルフケア
  • 次の週の練習計画の確認

フォームローラーは1本あると、張った筋肉をほぐすのに重宝します。練習後や休養日のケアに使うと、翌日の動きが軽くなります。

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私の場合、さきほど紹介したように平日朝の練習を軸に組み立てています。朝を中心にして、夜は時間と体調に余裕があれば追加でやる、という任意の位置づけです。「毎日やらなければ」と気負うより、軸になる練習日を決めて、あとは生活に合わせて柔軟にやる方が長続きします。社会人は仕事も生活もあるので、無理なく続けられる枠組みにすることが何より大事です。

そして、休養日はしっかり取ること。睡眠不足や疲労の蓄積は、レース中の足の痙攣(つり)の引き金にもなります(100人アンケートからわかった痙攣対策)。休むことも立派なトレーニングだと考えてください。

よくある質問#

12週間より短い期間しかありません。間に合いますか?#

完走目的なら、8週間程度でもこのプランを圧縮して臨めます。その場合もスイム優先の原則は変えないでください。削るならバイク・ランの量を減らし、スイムの頻度は確保します。逆に時間に余裕があるなら、各フェーズを延ばして無理なく積み上げるのが安全です。

週に何回練習すればいいですか?#

このプランは週6回(休養1〜2日)を想定していますが、忙しい人は週4〜5回でも完走は可能です。その場合は1回あたりに2種目をまとめる(スイムの後にラン、など)と効率的です。大事なのは回数よりスイムの頻度を落とさないことです。

プールが近くにありません。スイムはどう練習すれば?#

頻度が落ちるぶん、1回の練習の密度を上げます。ドリルでフォームを固め、限られた回数で効率よく泳力をつけます。レース直前には必ず一度はオープンウォーターで泳いで、プールとの違い(足がつかない・他の選手との接触)に体を慣らしておきましょう。

ブリック練習は何回やればいい?#

最低でも3〜4回はやっておきたいところです。Phase 3で週1回を目安に組み込みます。バイク後のあの脚の感覚は、知っているかどうかで本番の落ち着きがまったく変わります。

まとめ#

  • 12週間を3フェーズに分ける。Phase 1でスイムの基礎、Phase 2でバイクの持久力、Phase 3でレース準備
  • 最初の4週間はスイムに集中する。バイクとランは最悪ぶっつけでもなんとかなるが、スイムだけは別
  • ブリック練習(バイク→ラン)は最低3〜4回はやっておく。バイク後の脚の感覚に慣れることが重要
  • レース前1〜2週間はテーパリングで練習量を50〜70%に減らし、体をフレッシュにする
  • 週1〜2日の完全休養は必須。休むのもトレーニング
  • 3種目の配分は自分の弱点で決める。迷ったらスイム優先
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