バイクフィッティングに投資すべき理由

フィッティングを受けずにバイクに乗るのはもったいない#

バイクを買って、サドルの高さをなんとなく合わせて、そのまま乗り続けている方は多いです。正直に言うと、私自身もタイムトライアルバイク(Specialized Shiv)を手に入れた当初、正しいポジションがまったく分かっていませんでした。

私のタイムトライアルバイク(Specialized Shiv)。DHバーを使う前傾ポジションは、わずかなセッティングの違いが体への負担とエアロ効果を大きく左右する

私の一番の悩みは、長距離を乗るとお尻がひどく痛くなることでした。Shivのサドルがとても硬いこともあり、何が原因なのか自分では見当もつきません。そもそもTTバイクの「理想のポジション」をどう出すのかという情報が当時はほとんどなく、サドルの高さ・前後、ハンドルの高さ・前後、DHバーの幅と、調整できる箇所は多いのに、どこからどう手をつければいいのか分からない状態でした。

正直に言うと、フィッティングを受ける前は、TTバイクに乗ること自体が苦痛で、まったく楽しくありませんでした。しかも、自分のバイクで試行錯誤するのは本当に大変です。少しポジションを変えては固定ローラーで確かめ、また変えて確かめ……の繰り返しで、それだけで一日が終わってしまいます。

結局、自己流ではいつまでも正解にたどり着けないと感じ、2014年8月に、元オリンピアンの竹谷賢二さんにBody Geometry Fit(BG FIT)をお願いしました。指名ということもあり、料金は4万円ほどと少し高めでしたが、結果的にこれは大正解でした。

結論から言うと、バイクフィッティングはすべてのサイクリスト、特にトライアスリートが受けるべきだと考えています。数万円の投資で、パフォーマンスと快適性が大きく変わります。バイクは買って終わりではなく、その性能を100%引き出すには、自分の体に合わせるフィッティングが欠かせない、というのが私の実感です。ホイールやコンポーネントを交換するよりも、フィッティングの方が確実にタイムにつながる投資だと思います。

バイクフィッティングとは何か#

バイクフィッティングとは、専門のフィッターがライダーの体の寸法、柔軟性、筋力バランス、過去の怪我の履歴などを総合的に評価して、バイクのポジションを最適化するサービスです。

具体的には以下のような項目を調整します。

  • サドル高: 脚の長さ、膝の角度から最適な高さを算出
  • サドル前後位置: 膝とペダル軸の位置関係を調整
  • サドル角度: 骨盤の傾きに合わせて微調整
  • ハンドル高さ・距離: 上体の柔軟性と体幹の強さに応じて設定
  • クリート位置: 足の骨格に合わせてペダルとシューズの接点を調整
  • クランク長: 脚の長さと股関節の可動域から適切な長さを判断
  • DHバーの幅: TTバイクの場合、肩幅やエアロ効果に合わせてバーの間隔を調整

フィッティングにかかる時間は1.5〜3時間程度です。体の計測から始まり、実際にバイクに乗ってペダリングしながら調整を繰り返します。最近はモーションキャプチャやパワーメーターのデータを使ったハイテクなフィッティングもあります。

フィッティング前後で何が変わったか#

私がBG FITを受けて一番よかったのは、自己流の試行錯誤から解放されたことです。あれだけ悩んでいたサドルやハンドルの位置に、プロの目で一つの基準を作ってもらえました。これだけでも受けた価値がありました。

具体的には、次のような変化を感じました。

長距離でのお尻の痛みが改善しました。これが受けてよかった最大の成果です。もともとサドルが前すぎたことが痛みの一因だったようで、位置を見直してもらってからは、長く乗ってもお尻の痛みに悩まされることが減りました。サドル自体は硬いままで交換していませんが、ポジションが合うだけでこれほど違うのかと驚きました。IRONMANの180kmバイクパートを終えてランに移るときも、この差は本当に大きいです。

より空気抵抗の少ない前傾ポジションに、しかも楽に収まれるようになりました。私の場合、ステアリング(ハンドル)が高すぎる状態でした。Shivは調整幅が広いので、DHバーを下げ、肘パッドの前後位置を調整してもらったことで、自然に低く・楽な前傾に変わりました。フィッティングに向けて用意した前乗り用シートピラーなどの調整パーツについては、Specialized Shivのポジショニングにまとめています。パワーメーターを持っていないので「何ワット上がった」と数値では示せませんが、同じ前傾でも体が窮屈にならず、無理なく低い姿勢を保てる感覚がはっきりとあります。エアロが効くTTバイクでは、この「楽に低く構えられる」ことそのものがタイムにつながります。

ポジションの根拠が分かりました。サドル高、前後位置、ハンドルの高さと距離が、なぜその数値なのかをフィッターに説明してもらえます。根拠が分かると、その後に自分で微調整するときも迷いません。

そして何より大きかったのは、TTバイクで走ること自体が楽しくなったことです。フィッティング前はDHポジションを取り続けるのが苦痛でしたが、今では長時間でも楽にDHポジションを保てるようになり、楽しく、そして速く走れるようになりました。バイクの性能を100%引き出せている、という手応えがあります。

合わないポジションで起きる問題#

フィッティングを受けないまま走り続けると、以下のような問題が起きることがあります。

膝痛。サドルが高すぎる、低すぎる、前すぎる、後ろすぎる、いずれの場合も膝に不自然な負担がかかります。特に膝の前側(膝蓋腱炎)と外側(腸脛靭帯炎)の痛みは、ポジションが原因であることが多いです。

腰痛。ハンドルが低すぎたり遠すぎたりすると、腰椎に過度な負担がかかります。体幹が弱い初心者ほど、深い前傾姿勢で腰を痛めやすいです。

首の痛み。ハンドルが低すぎると、前方を見るために首を無理に反らせる必要があります。100km以上のライドで首が限界を迎える方は、だいたいこれが原因です。

手のしびれ。体重がハンドルにかかりすぎると、神経が圧迫されて手がしびれます。ひどい場合は、レース後しばらくしびれが取れないこともあります。

会陰部の圧迫。サドルの角度や前後位置が合っていないと、会陰部に過度な圧力がかかります。これは長期的に深刻な問題につながる可能性があるので、痛みやしびれがある場合は早急に対処すべきです。

どこで受けられるか、費用はいくらか#

フィッティングの種類費用の目安所要時間特徴
プロショップ1万〜2万円30分〜1時間基本的なポジション調整。購入時は無料の店も
専門スタジオ2万〜3万円2〜3時間モーションキャプチャや3Dスキャンで精密に調整
トライアスロン専門3万〜5万円2〜3時間DHポジションやランへの影響まで考慮

プロショップのフィッティング(1万〜2万円)#

スポーツバイク専門店の多くが、簡易的なフィッティングサービスを提供しています。購入時のフィッティングは無料のところも多いです。所要時間は30分〜1時間程度で、基本的なポジション調整をしてもらえます。まずはバイクを買ったショップで相談してみるのが良いでしょう。どこでバイクを買うかについては初めてのロードバイク選びも参考にしてください。

専門フィッティングスタジオ(2万〜3万円)#

BG FIT(Specialized)、Retül(Trek系列)、idmatch(SELLE ITALIA)などのシステムを使った本格的なフィッティングです。モーションキャプチャや3Dスキャンを使って、ミリ単位の精密な調整をします。所要時間は2〜3時間ほど。個人的には、このクラスのフィッティングを一度は受けることを強くおすすめします。

トライアスロン専門フィッティング(3万〜5万円)#

トライアスロンに特化したフィッターが、バイクパート後のランへの影響まで考慮してポジションを調整してくれます。DHポジションの最適化や、T2(バイクからランへのトランジション)で脚が動きやすいポジションの追求など、トライアスロン特有のニーズに対応してもらえます。IRONMANを目指す段階になったら検討する価値があります。

なお、機材一式にどれくらいお金がかかるかはトライアスロンを始める初期費用にまとめています。フィッティング代もこの予算に組み込んでおくと安心です。

フィッティングを受けるベストなタイミング#

バイク購入時が最も効率的です。最初から正しいポジションで乗り始められますし、場合によってはフレームサイズの選択にも影響します。

体の不調が出たときも当然受けるべきです。痛みが出てからでは遅いとまでは言いませんが、痛みが出る前に受けておくに越したことはありません。

レースシーズン前もおすすめのタイミングです。冬のオフシーズンに体重や柔軟性が変化していることがあるので、シーズン始めに微調整してもらうと良いでしょう。

ただし、フィッティング直後にいきなりレースに出るのは避けた方がいいです。新しいポジションに体が慣れるまで、最低でも2〜3週間、できれば1ヶ月程度は見ておきたいところです。

フィッティング後に自分でできること#

フィッティングで決まったポジションの数値は、できれば記録しておきましょう。サドル高、サドル後退量、ハンドル高さ、ステム長、クリート位置のすべてをミリ単位でメモしておくと、整備やパーツ交換のときに元のポジションへ正確に戻せます。

正直に言うと、私は数値を細かく記録まではしていませんでした。その代わり、せっかく合わせたポジションが狂わないように、できるだけバイクを分解しないようにしていました。ただ、輪行や整備でどうしても触ることはあるので、今思えば数値を控えておくに越したことはなかったと思います。これから受ける方には、記録をおすすめします。

また、フィッティングは一度受けたら終わりではありません。体が変化したり、トレーニングの方向性が変わったりしたら、再調整が必要になります。シーズン前に一度見直すくらいの気持ちでいると、ポジションのズレに早く気づけます。

よくある質問#

初心者でもフィッティングを受ける意味はありますか?#

あります。むしろ初心者ほど受ける価値が大きいです。体幹が弱いうちは合わないポジションで体を痛めやすく、また「正しいポジションの感覚」を知らないまま乗り続けると、悪い癖がついてしまいます。最初に基準を作っておくと、その後の調整も楽になります。

ロードバイクとトライアスロン(TT)バイクでフィッティングは違いますか?#

違います。TTバイクはDHバーを使う深い前傾ポジションが前提で、エアロ効果とランへの脚の残し方を両立させる必要があります。トライアスロンを本格的にやるなら、トライアスロンに詳しいフィッターを選ぶのがおすすめです。

フィッティングの効果はどれくらいで実感できますか?#

新しいポジションに体が慣れるまで、数週間はかかります。受けた直後に違和感があっても、すぐに「失敗だ」と判断しないでください。2〜3週間乗り込んでから、痛みやパワーの出方で判断するのが良いです。

パワーメーターがないとフィッティングは受けられませんか?#

そんなことはありません。多くのスタジオには計測機材が備わっていますし、パワーよりも体の角度や痛みの有無を重視するフィッティングも一般的です。まずは気軽に相談してみましょう。

まとめ#

  • バイクは買って終わりではない。性能を100%引き出すには、自分の体に合わせるフィッティングが欠かせない
  • バイクフィッティングは数万円の投資で、パフォーマンスと快適性が大きく改善する
  • 合わないポジションは膝痛、腰痛、首の痛み、しびれなど、深刻な問題を引き起こす
  • ホイールやコンポーネントの交換より、フィッティングの方が確実にタイムが縮まる投資
  • バイク購入時に一度、その後はシーズンごとに微調整を受けるのがおすすめ
  • フィッティングで決まったポジション数値は必ず記録しておくこと
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