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ロードバイクが盗難されたが犯人を見つけて返却させた話

結果: 約100万円相当のSpecialized S-Works Tarmacが盗難 → ヤフオクでパーツ発見 → 犯人特定・直接交渉 → 全パーツ回収 → 190日で示談成立。回収にかかった実費は約20万円(格安SIM・タクシー代・組立費等)。

概要#

  • 東京の六本木にて、ロードバイクにワイヤー錠をかけて、地球ロック(=ガードレールなどの構造物と自転車をくくりつける施錠)していましたが盗難されました。
  • ロードバイクが盗難されて戻ってこなかった人達の無念を晴らすためにも 犯人を特定し、追求しました。その結果、幸運なことがいくつか起きてロードバイクを取り戻しました
  • この記事に書いてある一連の行動には批判があるとは思いますが、ロードバイク乗りにとって有益になる知見のほうが多いと思いますので公開します。

前置き#

盗まれたバイクはSpecialized S-works tarmacです。完成車の新車定価は約100万円です。フレームセットは定価約50万円です。

約1年半前(2017年6月12日)に走行距離200km程度の中古を買いました。購入後は私が通勤、トレーニング、レース用として幅広い用途で使っていました。

購入後の走行距離は合計1,000kmぐらいです。(200kmライドを5回分と考えると少ないです。)

休日や深夜の時間を使って、箱根、熱海、房総半島、霞ヶ浦、三浦半島などに行き、思い出が多いバイクです。

中古での購入なので、防犯登録は行っていませんでした。

防犯登録は、1994年6月20日に「自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律」(通称:自転車法)の改正法が施行され、第12条第3項にて義務化されました。

「義務」だが「罰則」がない: 法律上は「義務」ですが、違反しても罰則(過料や罰金)が設定されていません。

中古車を再登録するには、前所有者の「防犯登録の抹消」と「譲渡証明書(委任状)」が必要です。個人間売買や古い機材ではこのデータが欠損していることが多く、物理的に「登録したくてもできない」状況が発生しやすいため、実質的に任意に近い運用となっていました。

盗まれる約1年前の記念写真

ロードバイクが盗難されたが犯人を見つけて返却させた話 - 画像1

Specializedのお店の前にて

1日目 駐輪#

遡ること半年前の2018年9月20日(木)、いつものようにSpecialized S-Works Tarmacで片道6kmをロードバイクで出勤しました。

いつもは、オフィスとしているマンションの部屋の中へ持ち込んで駐輪していました。しかし、この日は大家がマンションの前に立っていました。実は、このマンションは駐輪場が無いだけでなく、マンション屋内への自転車の持ち込みを許していない物件でした。

大家はすごい形相で「自転車持ち込み禁止なんだけど」と嫌みっぽく言われ、仕方なくオフィスの周辺で駐輪出来るところを探しました。

大家との関係が悪化しては困るので、そこは反論せずにおとなしく従いました。(その場でロードバイクを分解して荷物だから自転車ではない。と反論しようと考えましたが揉め事になる可能性があったので止めました)

そのマンションの近くに普段からロードバイクが止まっていて、特に盗まれていなく、人通りが多い場所をいくつか知っていましたが、この時は小雨が降り出してきていたので雨に濡れない所に駐輪する必要がありました。

そこで、高架下で雨に濡れない所に駐輪しました。1,500円ぐらいの安い芯の直径が5mmぐらいのワイヤーロックを使ってガードレールに縛り付けておきました。

駐輪した時は、すぐ横で道路工事をしていたので警備のおじさんの目もあるし、安心かなぁと感じていました。昼に取りに来てマンションの部屋にしまおうと思っていたので軽い気持ちで停めました。

ロードバイクが盗難されたが犯人を見つけて返却させた話 - 画像2

別の日に撮った現場。いつもこんな感じでロードバイクが5台ほど留められている。雨に濡れないのが良い。

雨は昼になっても降り続け、傘が無いと外を歩けないぐらいの強さでした。

このTarmacは一度も雨の中を走ったことが無いのでかなり綺麗な状態です。なので、雨に濡らしたくなかったので回収に行きませんでした

夜になっても雨は止まず、仕方が無いのでこの日は電車で帰宅しました。

雨の中、帰宅する道とは逆方向停めたロードバイクをチェックしに行くことが面倒なのでチェックせずに帰りました。

2日目 停めていたロードバイクが無くなった#

前日にロードバイクを駐車して返ったので、この日は電車で出勤しました。

昼に用事があって外出しましたが、ロードバイクが置いてある方向とは逆方向だったのでロードバイクが存在するかはチェックに行きませんでした。

夜になり、雨も止み、やっとロードバイクを取りに行って帰宅出来るタイミングになりました。

駐輪した場所へロードバイクを取りに行くと、**停めたところに自分のロードバイクが無くなっている!**となりました

あるはずの場所に物が無いと、自分の記憶が間違っているのか!?という気持ちにとらわれます。10回ぐらい昨日の朝からの行動を脳内再生してみましたが、何度考えてもそこに駐輪したし、過去36時間は回収もしていないです。

この後には会食があったし、頭の中も整理したいので、とりあえず会食の場所へ向かいました。

予定が終わり、帰りの電車の中でヤフーオークションラクマメルカリなどのオークションサイトやメルカリで「s-works tarmac」で検索して出品されていないかを確認しましたが、出品は確認出来ませんでした。

放置自転車回収が行われた可能性もあるので、放置自転車の回収を行われたことを祈りながらソワソワしながら就寝しました。

しかしながら「本当に大切なものは失ってはじめて気付く」とはこのことだなと反省しました。

「ロードバイク 盗難」といったキーワードでWebを検索すると、盗難されたロードバイクが見つかる事例は非常に低いようです。盗難のレポートはたくさんありますが、それが見つかったという報告は簡単には見当たりません。

このときは、まだロードバイクが区に回収された可能性もあるので、盗難されたという感じはしていませんでした。以下のような看板もあったので。

ロードバイクが盗難されたが犯人を見つけて返却させた話 - 画像3

ホームレス向けの看板ですが、念のため連絡をしてみようと思った。

3日目 ヤフオクで見つける#

3連休の初日です。

1週間後の週末にはデュアスロンの大会に出場する予定になっており、このs-works tarmacで参戦する予定です。なるべく早く回収して練習を積みたいという気持ちでいっぱいです。

区がロードバイクを回収してしまった可能性を考えて、六本木地区で回収された自転車が集められる、東八ツ山自転車等一時保管所に電話をかけました。

優しそうな声のおじいちゃんっぽい声の方が対応してくれました。ロードバイクの特徴や時間などを告げて、その場で探しに行ってくれました。しかしながら、回収されていないという結果に。

ふと、「パーツにばらされてヤフオクに出品されている可能性があるかも?」と思い、フレームの次に高価なホイールの名称である「roval clx40」で検索してみました。

そしたら、なんと同型のホイールをヤフオクで見つけました

盗難されたロードバイクのホイール

なぜか前輪だけ

なぜかフロントのみ

この時点では、私のホイールとは別物の可能性もあります。きれいに乗っていたため、私のと断定できるような特徴的な傷が無いためわかりません。

しかし、出品のタイミングとこのチタンの軽量クイックレバーから察するに、私のホイールであることは状況証拠ではありますがほぼ間違いありません

盗難されたロードバイクのホイール

クイックレバーが特殊

盗難される前に撮影したロードバイクのホイール

過去に撮影した私のクイックレバー

これは、大きな1歩です。放置自転車として回収された事が否定され、警察が不要品として回収したことが否定され、盗まれたことがほぼ確実になったためです。公共機関に回収された可能性がある状態だと被害届を出そうにも被害に合っていることの確証が得られなかったためです。

そして、ホイールの出品者が出品している他の出品物を見ると、別の部品が多数出品されていました。

ヤフオクの場合はほとんどの場合、本人確認を行わないと出品できないような規約になっています。

この出品者の出品した日付は、なんと私が駐輪した1日目の夜中でした**。1日目の夜には既に盗まれていました**。

「自分の自転車が盗まれて、犯人が所有者になりきって出品している」と仮定して、以下の出品のスクリーンショットをご覧頂ければと思います。

**説明文を読めば読むほど怒りがこみ上げてきます。**理由は、あたかも自分の物かのような嘘の走行距離などを記載しているのが腹立たしく思いました。(個人的な価値観ですが嘘は大嫌いです)

「走行距離は100kmほどです」とか書いてあるけど、「嘘じゃん!」って突っ込みたくなります。

盗んだ人(または組織)は、ロードバイクを盗んだこと(窃盗)にプラスして、解体(器物破損)を行っているので2つの罪を重ねております。

この間にも、FacebookとFacebook Messenger上でたくさんの有識者の方にアドバイスを頂きました。普段は、トレーニングを一緒にする仲間で、仕事についてはお互い深く話しませんが、意外と身近に凄い職業や役職の方がいらっしゃる。持つべき物はトライアスロン友達だなと思いました。

ヤフオク出品のスクリーンショット(30枚)

犯人がヤフオクに出品したパーツのスクリーンショット一覧。あたかも自分の物かのような嘘の走行距離が記載されている。

フレームセット出品

コンポーネント出品1

コンポーネント出品2

コンポーネント出品3

パーツ出品1

パーツ出品2

パーツ出品3

パーツ出品4

出品詳細1

出品詳細2

出品詳細3

出品詳細4

出品詳細5

出品詳細6

出品詳細7

出品詳細8

ホイール出品(前輪)

ホイール出品(後輪)

クイックレバー出品

サドル出品

ハンドル出品

ペダル出品

その他パーツ1

その他パーツ2

その他パーツ3

その他パーツ4

その他パーツ5

その他パーツ6

1円スタート出品1

1円スタート出品2

高いパーツなの1円スタートで出品されているのを見ると、「そんなに安いなら落札する!」っていう気持ちになりますが、そもそもわたしの物です。

自分が過去に撮ったロードバイクの写真と、ヤフオクに出ているパーツの写真を見比べて、同じ傷を発見しようと細かい所までチェックしましたが、大きな傷が無くて無理でした。

↓過去にロードバイクを掃除したときに撮った写真。なかなか寄って撮らないから傷が写っている写真は少ないです。

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4日目 警察に被害届を提出#

「ロードバイク 盗難」でググると1番に表示される有名な記事があります。自転車泥棒、追い詰めた執念……「ヤフオク!」のアラートで追跡、Facebookで本人特定。自転車盗難から回収を行った事例はなかなかweb上にありません。盗難されたという報告ばかりが上がってきて、回収はほとんど行えていない感じがします。この記事では大きな傷やシリアル番号が決め手で警察が動いてくれています。

私の自転車は綺麗に扱っていたため、傷が少なすぎてこの部品が自分の物と立証できるような決定的なポイントがありませんでした。

警察が動くためには、シリアル番号が入っている必要が有ります。シリアル番号はフレームにしか印字されていません。しかし、ロードバイクのフレームは出品されていないです。犯人はフレームを出品することが危険と知っている常習犯かもしれません。

犯人は早く売りさばきたいというためか、出品終了期限が3日というように短く設定されています。こちらも早めに動かないと他者に落札されてパーツが日本中に発送されて、犯人への糸口が閉ざされてしまう可能性があります。

何はともあれ、盗難されたことがほぼ確定したので被害届を出し、どのような行動を取るべきかを相談するために麻布警察署に行きました。これだけ状況証拠があるから警察が動いてくれるだろうと思ってました。

警察の回答#

5分ほど待ち、個室に通されて、被害届のヒアリングを受けました。「ヤフオクに私のロードバイクが出品されているからどうにかしてほしい」という趣旨の内容でトータル1時間ほど相談しました。その結果はこちら↓

  • シリアル番号が入っていないと本人の物かどうかは断定出来ないので警察は動けない。例え、傷があったとしても、同じ傷がはいった別物もあり得るので同一の傷という理由だけでは動けない。
  • 被害届は受理します。
  • ヤフーオークションに相談してみて。

警察が動けない理由は、シリアル番号という世界でユニークな情報が無いと私の持ち物と断定が出来ないから踏み込めないとのこと。パーツの傷や組み合わせでは、同じパーツで同じ傷が入る可能性がゼロでは無いから、犯人に「同じ傷が入った別物です。同じ元という証拠はあるのか?」と反論されたら追求出来ないため。

ということで、ヤフーにも問い合わせを投げました。

ヤフーの回答#

ヤフオクのお問い合わせ欄から、「盗品が出品されているので出品を止めて!」という主旨の連絡をしました。回答はこちら。

警察に相談してみて。警察からの要請があれば協力する。

まぁ、当たり前の回答ですよね。私の主張自体も客観的視点では100%では無いですし。もし、私の要求が通ってしまうのであれば悪意のあるユーザが出品を止められることになってしまうので。

ということで、公的機関とヤフオク!は一切対処してくれないという回答になりました。


友人から「警視庁にも窃盗の窓口があるよ」というアドバイスをもらい、警視庁にも連絡してみましたが、規模が小さいと感じたようで、興味が無さそう。取り合ってくれませんでした。

5日目 新たな発見#

犯人がヤフオクで出品しているパーツはほぼ全てが匿名配送の設定になっています。匿名配送では、例え商品を落札しても出品者と落札者の住所はお互いに知られずに済む仕組みになっています。

しかしながら、フロントホイールの出品だけが匿名配送では無いことを友人が発見します。おそらく犯人のミスです。

ヤフーでサブアカウントを作ってフロントホイールを落札しました

こちら側は、評価がゼロの新規アカウントなので入札を取り消されるリスクがありました。そこで、事前に質問欄でコミュニケーションして犯人に安心させます。「新規アカウントですけど、どうしても欲しいので誠実に取引しますのでよろしくお願いします」という感じで。

せっかくサブアカウントを作ったので、評価が汚れても全然痛くも痒くも無いので、犯人から第三者に配送されてしまうのを防ぐために主要なパーツをほとんど落札しておきました。

自分のロードバイクのパーツを、自分で落札するという変な感覚を覚えました。もし落札して普通に決済したら、同じロードバイクに2倍の費用を払うことになるのか。。。と。意味の無い計算をしたりしてました。

6日目 犯人との交渉権を獲得#

商品を落札できたということは、犯人とメッセージをプライベートでやりとり出来る権利を手に入れたということでもあります。

そこで商品の状態を聞くことを装ってヒアリングを開始しました。

リアホイールはあるか?こちらに来てもらえないか?取引する日を伸ばせないか?フレームは出品しないのか?といった事を色々質問したが、新しい情報はあまり得られませんでした。

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嘘をついてくる事に怒りを感じます

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ヤフオクの取引ナビは、お互い15通までしか送信出来ないという制限があります。

たくさん質問していたため、あっという間に上限に近づいてしまいました。犯人が続きのやりとりをSMS(ショートメッセージサービス)でやりとりすることを提案してきました。

SMSには電話番号が必要です。自分の個人携帯の番号を教えるのは怖いので、別の番号を用意する必要が有ります。

短期で電話番号を使いたいのでレンタル携帯を探しましたが即日の手配は難しく、料金も高いです。そして、犯人とのやりとりが長期戦になったときに、料金が高くなるリスクがあります。

そこで、格安SIMと呼ばれるMVNO業者で電話番号を作る事にしました。普通、携帯を契約する時はウキウキするのに、暗い気持ちでビックカメラへ。当時において固定費が最も安いLINEモバイルに決めました。

色々説明を聞かされ、手続きに0.5時間、開通待ちに1時間、受け取りに0.5時間かかり、やっと入手しました。これだけの時間とお金をかけて、ロードバイクを回収出来なかったときの事を想像すると不安になります。

この日から「早めにロードバイクの回収を諦めて損切りした方が良いのでは無いか?」という問いとの葛藤が始まりました。

このSIMを、この日の朝に届いた新品のiPhone XSに入れて使います。15万円する端末を犯人のやりとりだけに使うなんて贅沢です。自分のメイン携帯のデータ移行には時間がかかるから、中身が空っぽの新品iPhone XSを使うのが一番時間的に早いので仕方ないです。

**匿名配送ではない商品を商品を落札しているので、ヤフオク上に犯人の住所と氏名が記載されていました。**この時点では本当かどうかわかりません。

8日目 犯人に会う#

犯人が取引を急ぐので、3連休最終日の夜中に行くことになりました。

**対面したときに起きる最悪のケースを考えれば考えるほどこちらのリスクが大きいことがわかります。**例えば、集団で待ち伏せされて凶器で脅されるとか、いきなりバットで殴られるとか。

待ち合わせ場所に指定されたのは綾瀬駅

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準備時間が短いですが、最悪の事態を想定してできる限りの準備をします。まずは、仲間

理由は、偵察、目撃、いざとなったら警察官を呼ぶ、相手が集団で来たときに威圧するなどが必要なので。(なんか、中学生とか高校生のけんかみたいなノリです。考えていて悲しくなってきます。いい大人なのにこんなことしていて。。。)

リスクは、相手の地元に行くこと。囲まれたらやばい。暴行されるリスク。こちらの個人情報がばれたらやばい。

会う日が直近だし、対面することは暴行されるリスクがあるのでなかなか一緒に行ってくれる人が集まりませんでしたが、友人が2名協力してくれました。

窃盗犯が複数人でヤバい連中だった場合は、拉致や恐喝されるかもしれないので、身分証と財布は持っていかないで連絡を取るための携帯のみを持って行きました。

待ち合わせ場所の綾瀬駅に到着。土地勘が無いので、早めに行って周囲を偵察。交番があるので、待ち合わせはその近くにすることにしました。

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駅周辺は、酔っ払った20歳ぐらいの若者が何かを叫びながら信号無視をして渡っていたり、独り言を発しながら歩いている50歳ぐらいのおじさんが居ます。怖い。

一緒に行った友人とはFacebookメッセンジャーでグループを作って三者通話をして、リアルタイムで会話を聞いてもらえる状態で臨み、何かあったときに助けてもらえるようにします。

対面したときに、達成したい事は、フレームを入手して犯人と確定すること。しかしながら、難しい場合は、とりあえず逃げられないように犯人の身分証のコピーを押さえておきたい。よって、免許証のコピーを撮らせることを条件にホイールの買い取りを提案することにしました。

それに追加して、もし危険な感じになったら、諦めて離脱ということを共有しました。命大事に。

犯人としてもサンクコストがあるので、そう簡単には引かないはずと思ってました。

「おとり捜査」の警察同行

今回のケースでは、取引場所を特定した段階で「取引現場に警察官の同行(または待機)」をより強く要請すべきでした。民事不介入と言われますが、「今まさに盗品が取引されようとしている(現行犯)」状況であれば、動く警察官も多いようです。

ついに対面!!#

こちらが先に待ち合わせ場所に到着していると、身バレして不利になるので、先に待ち合わせ場所に到着させて、人相や本当にホイールを持って来るかなどをチェックして敵の情報を得るためです。

そして、犯人が到着したと連絡がSMSできました。そして、友人がホイールを素手で持って立ってることを確認しました。

そして、対面

まず、ホイールの現物を確認しました。傷などが無いから自分の物かどうか断定出来ないですが、とりあえず新たな傷やフレは無さそうでした。なぜかタイヤが安いグレードに変わってました。私が付けていたのはContinental Grand prixというタイヤで1本約4,000円でしたが、ボロボロの安そうなタイヤに変わってました。

そして、私が犯人に切り出します。「以前、直接取引で偽物を買わされたことがあったので念のため身分証の写真を撮らせて欲しい」と依頼しました。回答は、「今は持っていないので、近くの自宅まで取りに行かないといけないから嫌だ」とのこと。しばらく平行線が続きました。

この会話でわかったのは、おそらくヤフオクに登録されていた住所は正しいと言うこと。話の中で聞いた家までの時間や距離、方向が一致していました。

最終的には「タクシー代を出すから、取りに行ってきてよ。やましいことが無ければ、別に損する話じゃ無いしいいでしょ?」と押し切って、タクシーで取りに行かせました。

なぜかホイールは私の手元に置いたままです。

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30分が経過しても戻ってきません。

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このままでは犯人に逃げられてしまうという状態になってしまいましたorz

犯人に逃げられて、ロードバイクのパーツを回収できない事を覚悟しました。フロントホイールだけしか返ってこないかと。これだけでは流通価格で4万円相当。

なので、もうダメ元で、犯人へネタバレしました。

ヤフオクで住所が見えているので、それを元に住所がわかっていると、鎌をかけました。

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自供が獲れました!!

逆転サヨナラホームラン!オセロで言えば、最終局面で全部ひっくり返す感じ。この証拠さえあれば警察も動けるはず。相手の電話番号もわかっています。

犯人に「道で拾いました」とか言われたら万事休すでしたが、自供が取れて良かったです。

この時点で、3連休最終日のAM2時。その日の朝9時からミーティングがあるのに勘弁して欲しい。一緒に来てくれた友人にも申し訳ないです。とりあえず池袋で深夜まで開店している天下一品にてラーメンをご馳走しました。

さて、窃盗罪と器物損壊罪がどのくらいの罰則なのかを確認してみました。

窃盗罪における罰金#

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窃盗罪に該当する行為と罰則

器物損壊罪における罰金#

器物損壊罪の刑罰は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料です。
器物損壊罪で逮捕され有罪となった場合には、懲役刑か罰金刑となる割合はおおよそ半々となっています。科料となることは稀と考えてよいでしょう。
懲役刑となった場合には、6か月から2年未満の刑期が相場となり、具体的には1年以上2年未満がおよそ50%、6か月以上1年未満がおよそ38%となっています。また、刑期が3年未満の場合には、執行猶予が付く可能性がありますが、器物損壊罪の場合には、そのおよそ62%に執行猶予が付与されています。
罰金刑の場合の相場は、10万円から30万円となっており、およそ43%が20万円代、およそ38%が10万円代となっています。

9日目 犯人に会う(2回目)#

犯人の気が変わって逃げられる前に、できるだけパーツを多く回収するために綾瀬へ再び行きます。

逃げられたら、警察を動かして逮捕するが面倒だし、時間もかかってしまう恐れがあるためです。

回収するパーツに漏れがあると困るのでリストを作りました。意外とパーツが多くて大変でした。

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この日はフレームとハンドルを回収しました。

フレームに貼ってあった、名前のステッカーは剥がされていました。

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無事帰ってきたフレーム

その傍ら、こちらの記事ではバラバラフレーム事件が取り上げられています。

愛車のフレームが、切断されてこんな状態で晒されたとしたらまじ辛いです。単に盗まれて、見つからない方が幸せかも。。。

切断されたフレームの画像(出典:自転車盗難情報サイト)

出典:自転車盗難情報サイト

話は戻って、窃盗した人の身分証を撮影しました。

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犯人に、犯行方法について聞いたところ、「青山一丁目に鍵がかかってない状態で置かれていたから、綾瀬まで自走で帰った」とのこと。何十回も嘘を付いている人の発言なので信頼性ゼロです。

ヤフオクに出品されていない他のパーツはメルカリなどのフリマアプリで既に売却して発送してしまっているとのことでした。メルカリ上で売れた商品はすぐに掲載を外して見つかりづらくしているようです。

15日目 犯人に会う(3回目)#

犯人が既に発送してしまったパーツを取り戻したりして、全部のパーツが手元に揃ったという連絡が来たので、残りのパーツを全て受け取ります。

今回は、行くのが面倒なので職場の近くまで持って来てもらいました。私が行くと、往復で、2時間の人件費と2,000円ぐらいの車代がかってしまい、犯人への請求額が増えてしまって未回収リスクが高まってしまうためです。

六本木ヒルズ森タワーのスパイダー像の下のベンチで、パーツのリストとパーツの確認を行いました。コソコソとしながら品物の検品を行いつつ、お金の受け渡しをしているので、そこだけ切り取ると麻薬の売人みたいな気分です。。。

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これで全てのパーツが揃いました。

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20日目 組み立てを依頼#

以前から、オーバーホールに出したかった信頼の出来るHi-Ridgeにアセンブル(組み立て)をお願いしました。

店長も経緯を知っており、「ウチに来るんじゃ無いかと思ってたよ〜」とのこと笑

40日後 元の姿に戻る#

**元の状態より格段にコントロール性が良くなっている。**ロードバイクは精密機器だなぁと感じます。くみ上げる人の腕でここまで違うとは!

以前のロードバイクは中古で、いまいちビシッと決まった感じが無くて、コントロール性が低くワイヤーのケーブリングも微妙な感じでした。最低限は自分で直していましたが、ゼロからやり直したかったのでちょうど良かったです。

今度からメンテナンスはHi-Ridgeに出そうと決めました。

50日目 見積もりと請求#

一段落したので精算したいとおもいます。以下が損害賠償請求の見積書の作成です。

とりあえず作って送りました。時給単価はかなり格安での計算です。

本当は精神的苦痛の対価として50万円ぐらいプラスしたいです。機会損失(Opportunity Cost)も請求したいところです。

ロードバイクが盗難されたが犯人を見つけて返却させた話 - 画像37

ロードバイクが盗難されたが犯人を見つけて返却させた話 - 画像38

減額を要求する回答が来ると予想していましたが一次回答は違いました。全額払ってくれようとしています。意外と誠実です。

そしたら、毎月6万7千円の分割払いを提示されました。そして、提示された利息の計算方法も一般の貸付の金利計算とは違う感じです。(借り主に有利になるような計算方法になっている)

流石に12回払いはコミュニケーションコストが大きそうだし、途中で逃げられたら困ると思って、約50万円のディスカウント(71%引き)をしました。

(後々、値引きしすぎたと反省)時間が経過すると、味わった痛みが減ってしまうので安くしすぎたなぁと。

ロードバイクが盗難されたが犯人を見つけて返却させた話 - 画像39

1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後#

滞りなく現金にて返済が行われました。

キャッシュレス社会へ向けて国が動こうとしている中、匿名性を重視するために現金の存在は重要だなと感じました(泣)

今思いつきましたが、仮想通貨のウォレットなら大丈夫か。思考が悪い人と同じだ。。。

190日目 盗難届取り下げ#

麻布警察署へ盗難届を取り下げに行ってきました。

盗難届を取り下げないと、町中で自分のロードバイクを乗っているときに止められて、シリアル番号で照会されると盗難届が出ている状態になってしまいます。

警視庁麻布警察署 - Google Maps

  • 受付に「自転車が見つかったので盗難届を取り下げたい」と伝えたら、刑事組織犯罪対策課に案内されました。(部署名が大げさ)

  • その時の担当警察官と会話したことの要点

    • 警官「よく見つけましたね。珍しい!経緯を聞かせてください。」

    • 私「オークションで見つけて直接取り引きして自供をとりました。」

    • 警官「法律的には自転車が盗難されたら、警察として動いて戻ってくることはほとんどできない。窃盗犯に有利な状態になってしまっている。」

    • 私「はい。警察もヤフオクもこれだけ証拠があるのに何も動いてくれないので承知してます。」

    • 警官「かなり危ないので犯人に会いに行かないでください。」

    • 私「同感です。では、どうすれば良かったですか?」

    • 警官「・・・(無言)」

    • 警官**「その犯人の名前を経緯を書く書類に記録しておきたい**のだけれど、差し支えなければ教えて。」

    • 私「 犯人が誠実に対応していたので、記載しないで良いです。

その場で警察官が被害届取り下げの書類をPCで作ってくれて、はんこを押して終わり。取り下げをしたこと自体の証明書は無く、受理されたら後日に受理IDが発行されるとのこと。もし、必要なら電話で連絡するとのことでした。(面倒なので不要と伝えた)

警察官に、今回の対応は、慰謝料の金額的にも妥当だし、違法性は無さそうとの感想をもらいました。(請求金額が高すぎたりすると恐喝になる恐れがあるとのことなので。)

犯人へ被害届を取り下げたことを連絡して終わり。

ロードバイクが盗難されたが犯人を見つけて返却させた話 - 画像40

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示談(民事)と刑事事件は別物です。

盗難届を取り下げても、警察が認知した以上、本来は公訴の可能性がありますが、実務上は被害者の意思が尊重されます。ただし、犯人を野放しにするという「外部不経済」を生む側面があります。

ロードバイクに乗る人へアドバイス#

まずは、大前提となる心構え

盗まれないようにするしか無い。盗まれたら返ってこないと考えておく。

物理ロックをかけるのはもちろんのこと、以下の防犯対策も行うのが良いです。盗難対策は可能な限りやっておくのが良いです。

  • ロードバイクの盗難保険に入る。
    • auの「すぽくる」であれば、購入後いつでも加入できます。掛け金は補償額に応じて異なるようです。盗難リスクがある場所に置く人にとっては安い気がします。

    • ウーバーイーツをやっていたりする人とか。

ロードバイクが盗難されたが犯人を見つけて返却させた話 - 画像42

保険料の参考

  • 車の中に保管するようにする
    • 万が一盗難されても保険が下りる(保険の内容によってはおりない)
  • シリアル番号をメモする
    • フレームには必ずシリアル番号があるので控えておく。盗難届の際に必要になります。

    • Dura-Aceなどの高級パーツにはシリアル番号が刻印されている場合があるので、合わせてメモしておくのが良いです。今回みたいに、パーツに分解されて販売されるケースがあります。

  • Alterlockを取り付ける。
    • GPSによってトラッキングできます。ロック中に振動が検知されると位置情報がスマホにアラートとして飛んできます。

    • 電池は約2週間〜1ヶ月程度は持ちます。

    • デバイス内にSIMが入っており、サービス利用に月額400円程度がかかります。

  • Apple AirTagを取り付ける。
  • 火災保険+家財保険に入る
    • 自宅敷地内に留めていて、盗まれた場合は保険が下りる。

まとめ#

  • 今回のケースは運が良く、3つぐらいラッキーが重なったので取り返すことが出来ました。
    • 非匿名出品

    • 犯人の自供

    • 犯人の誠実な対応

  • ご協力頂いた方々、ありがとうございました。1人だったら諦めていましたし、途中で実行不可能と判断してやめていたと思います。

本記事は筆者の体験談であり、犯人との直接交渉を推奨するものではありません。同様の事案では、身の安全を最優先し、警察や弁護士を通じた解決を強く推奨します。

備考#

  • 犯人
    • この記事の「犯人」は法的な犯人の定義ではありません。法律的には被疑者にあたります。

    • 民事で解決するのでなく、法で裁けば「犯人」に該当するので犯人と呼んでいます。

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